「名著の森」シリーズとは
流行は移ろうもの。
今年流行した本は、来年には誰も読んでいないかもしれない。
しかし、時代が変わっても読み継がれる本もある。
この「名著の森」のコーナーでは、私「なむ」が、「この本は一生本棚に置いておくだろう」と考えている「名著」を紹介していきます。
「名著の森」三冊目
三冊目は、こちら。
チクセントミハイの『フロー体験 喜びの現象学』です。
本書がおすすめの方はこちら!
- 「何か自分の得意なことを見つけたい!」という人
- 「日々の楽しみを見つけたい!」という人
- 「仕事が苦痛でいつも憂鬱だ…」という人
「つまらないと思っていたことも、自分次第でいくらでも楽しめる!」
と気づける本。人生のあらゆる活動が楽しみに変わります!
著者のチクセントミハイ先生は、心理学の分野では非常に著名な研究者です。
「フロー状態」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
あるいは、スポーツ漫画で「ゾーンに入った…!!!」なんてシーンを見たことがあるかもしれません。
日本では、「ゾーン」と「フロー」は近い意味で使われているようです。
そのときしていることに完全にのめり込んで集中している状態
これだけ見ると、「自分はアスリートではないし、関係ないや」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本書を読むと、「フロー状態」はアスリートに限らず、「あらゆる人」の「あらゆる活動」に開かれており、自分のライフワークにおいて、この「フロー状態」に入れるくらいに深くのめり込むことが、人生の最大の喜びの一つであるということに気づくことができます。
しかも、「フロー状態」に入ることこそ、あらゆる活動における「上達の秘訣」であるといいます。
楽しく、しかもどんどんスキルアップしながら仕事をするために、すべての人に「フロー状態」は有用なのです。
そうはいっても、「ゾーンに入るッ…!!!」みたいなイメージでいると、とても凡人には無理ではないかという気がしてしまいますね。
ご安心ください。
本書『フロー状態 喜びの現象学』では、ふつうの人がいかにして「フロー状態に入る能力」を向上させていくかを説明しています。
ポイントは以下の3つです。
- 適度なレベルの挑戦
- 明確な目標とフィードバック
- 「今していること自体」に注目する
順番に見ていきましょう。
適度なレベルの挑戦
これについては、Wikipediaにわかりやすい図があります。
横軸がその人が持っている「スキル」のレベル、縦軸が今取り組んでいる「挑戦」の難易度を表しています。
自分のスキルからすると楽にできること(下)は退屈ですし、
自分のスキルからすると難しすぎること(左上)は不安になります。
「自分も高いレベルで実行できるハードな挑戦」こそ、フロー状態に至る第一の条件になります。
「楽勝だな」と思ったら、ちょっと課題のレベルを上げてみること。
「できるか不安だな」と思ったら、ちょっと課題のレベルを下げてみること。
シンプルですが、まずはこれが王道です。
「ほどよい難しさ」にレベルを調整すること
明確な目標とフィードバック
「それではみなさん、『いい感じ』に絵を描いてみてください」
いきなりこう言われて、頑張って絵を描こうと思えるでしょうか。
なかなか難しいですね。
どうすれば成功と言えるのか、より上達するにはどうすればよいのか。
大前提として、「明確な目標」がフロー状態には必要になります。
あるいは、こんなのはどうでしょうか。
「…よし!相当頑張ったぞ。これはうまくいったんじゃないか…?」
「…はい、ありがとうございます。結果は一ヶ月後にお知らせします」
これではやる気もおきませんし、上達しようもないですよね。
フロー状態に入るには、「即時のフィードバック」が必要です。
あなたの活動に、「明確な目標」や「フィードバック」がないとしたら、それを意識して設定する必要があります。
「明確な目標」と「即時のフィードバック」を組み込む
※ちなみに、「絵を描く」のような芸術的な活動においては、どうしても「明確な目標」や「(他者からの)フィードバック」を置きづらいという側面があると思います。この点については本書でも解説されていますが、自ら一筆加えるたびに「正解」「不正解」がわかってくる、というようなレベルにまで能力を引き上げていくことで、自らフィードバックを得ることが可能になっていきます。大事なのは「明確な目標」を自ら設定し、環境からの「フィードバック」に意識を向けることです。
「今していること自体」に注目する
人間は、放っておくと自然にあれこれといらぬことを考え始めてしまいます。
これをやっていて意味はあるのか、本当にこれであっているのか、本当はああしておけばよかったんじゃないか…。
あるいは、今やっていることと関係ない心配事まであれやこれやと浮かんでくる。
今していることの結果や、そのあと起きることなどには意識を向けず、
「今している活動、それ自体」だけに意識を向けること。
これがフロー状態の条件になります。
とはいえ、「意識を向けよう」と思うだけでは難しい。
前提となるのが、上で紹介した「程よい難易度」と「明確な目標とフィードバック」になります。
程よい難易度の課題に向き合って、フィードバックに意識を向けて、どうしたら目標に到達できるかのみに意識を集中させましょう。
今していること自体に集中する!
まとめ
以上、ミハイ『フロー体験 喜びの現象学』のご紹介でした。
あらためて、ポイントをまとめます。
- 適度なレベルの挑戦
- 明確な目標とフィードバック
- 「今していること自体」に注目する
こうしてみると、「ゲーム」というのは人をフロー状態に入れるようにうまく設計されていますね。
実際、ゲーム開発者は「フロー」の理論をゲーム作りに活かしているそうです。
ミハイ先生は「フロー自体に良い悪いもない」「フローは悪用も可能」ということを言っています。
人を中毒にさせるようなものをつくって、搾取することにも「フロー」の理論は使えてしまうわけですね。
実際にそのような娯楽はすでにたくさん世の中に広まっていると思います。
しかし、「悪用できる」というのは何事にも当てはまりますね。
道具は使い方次第。
現代人は、Youtubeやネトフリ、ソシャゲなど「時間を溶かす」デバイスやサービスに囲まれています。
この「時間が溶ける」というのも、「フロー」の一つです。
意志を持って時間を使い、充実感に満たされているなら問題ないですが、もし「意図せずに時間が過ぎていた」となるなら、それは悪い「フロー」と言えるでしょう。
意識が散漫になり、何事にも集中できていない感覚。何も自分なりに得意なこともなく、仕事はとにかく時間が経つまで耐えるばかり。
少しでもそんな状態にあるとしたら、一刻も早く抜け出すことを考えましょう。
意識は秩序立ち、時間を忘れるくらい深く集中できる。どんどんと上達し、充実感に溢れている。
そんな、最高の「フロー状態」を目指しましょう。
それが、現代において、便利なテクノロジーに毒されずに、充実して生きるための唯一の道と言えるでしょう。
ということで、三冊目の今回は、ミハイ『フロー体験 喜びの現象学』でした。
また、次回の名著の森シリーズもお楽しみに。
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